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Things you can live without knowing

言説分析と内容分析

は具体的に何が違うのでしょうか。

 

今、研究で使用するための雑誌の記事を収集しています。

その分析のためのガイドブックを探していると、たぶんどれも似たことを書いているのに、本によって分析対象の呼び名が変わることに気づきました。

そもそも、言説・知識・テキスト・言論・データなどは、何が違うのでしょうか。

自分が今収集・分析しているものは、先人が言うところの何なのでしょうか。

 

言説分析とは

朝日新聞社の『知恵蔵』によると「言説」は

ある「もの言い」の文化的,社会的文脈

とされています。これはフーコー

特定の社会的・文化的な集団・諸関係に強く結びつき、それによって規定される、言語表現、ものの言い方

という考え方に基づいています。

 

他の定義も見てみましょう。

有斐閣の『社会学小辞典』ではハーバーマスのコミュニケーション行為理論に基づいて、

コミュニケーション上の自明的了解が崩れた時に、問題化した規範や価値の新たな根拠づけによって、その了解を修復するために行われるコミュニケーション

とされています。

これはどちらかというと「討議」の定義であって、「言説」と言われると若干違和感があるのですが、どうでしょう。

"discourse" の和訳としてまとめられているからでしょうか。

 

また、『言説分析の可能性-社会学的方法の迷宮から』(2006)より、佐藤俊樹による「言説分析」の分類においては、

ある意味的定在の意味を確定できる一定の単位が存在せず、意味を関係的に扱う

のが「言説分析」とされています。

 

何だか難しい言い回しですね。

「意味的定在」は記号や単語、文、文章などのことであり、「意味を確定できる単位」はそれぞれの意味的定在以上の大きさであれば何でも良いとされます。

例えば、「知識社会学」において、意味的定在は「知識」、意味を確定できる単位は「社会」となります。

また、アンケートの自由回答記述の計量分析においては、意味的定在は「形態素」、意味を確定できる単位は「文」「段落」「個人の回答」などになるでしょうか。

 

意味を関係的に扱うというのは、ある意味を個体的に扱うのではなく、他の意味との関係の中で扱うという意味です。

 

つまり、佐藤俊樹によれば、言説分析には

①意味同定手続きにおける不明確さのおかげで、特定の基準に沿った分析・特定の関係性をひろった分析となることを避けることができ、

②また、意味を関係的に扱うことで、ある言説をいくつかの状況にあてはめ、意味のゆらぎが生じる場合に対応できる

という2つの利点があるとされます。

 

内容分析とは

有斐閣の『社会学小辞典』では、内容分析は

コミュニケーションの内容を客観的・数量的に分類し測定する調査技術

とされています。

当初は手作業で単語数や行数を数えるなどの手法をとっていたようですが、さすがにこれでは労力がかかりすぎるということで、現在ではコンピュータありきの手法となっています。

 

例えば、ファッション誌において「ジーンズ」という単語が登場した回数を順を追って見ていけば、ジーンズの流行が高まった時期を数量的な指標で把握することができるかもしれません。

 

最近では、R,MeCab,KH Coderなどのツールによって、このような質的データを量的に把握する方法が数多く編み出されています。

テキストデータを量的に分析する「テキストマイニング」や「計量テキスト分析」がその代表例でしょう。

 

計量テキスト分析とは、KH Coderの開発者の樋口耕一によれば

計量的分析手法を用いてテキスト型データを整理または分析し、内容分析を行う方法

とされています。

テキストマイニングは、これを大量のデータに対して行うイメージでしょうか。

 

字面だけだと、これらの方法と内容分析の違いがわかりにくいですね。

ただ、実際にやってみるとだいぶ違うことがわかります。

伝統的な内容分析は単語数の数え上げなどの素朴な方法が主ですが、計量テキスト分析では手作業では困難な様々な分析が可能です。

共起語のネットワークを図にしてくれたり、コーディングを行って単語をいくつかのカテゴリーに分けたり、それらをクロス集計したり…

 

とりあえず、分析するテキストを容易に電子化できるなら、一度はやってみる価値があるでしょう。

 

今やっていること

自分は今、ある雑誌のある記事を20年分程度収集した段階です。

量が多いので、とりあえず一度電子化して、KH Coderにかけようと思っています。

その作業が死ぬほどめんどくさいのですが、昔よりは恵まれていると思って、がんばります。

 

ただし、開発者や先行研究が示している通り、KH Coderで分析するだけでは不十分でしょう。

テキストデータが質的データである以上、質的分析も行う必要があるからです。

質的データ分析法―原理・方法・実践

質的データ分析法―原理・方法・実践

 

 

また、先述のように、言説分析というのはある問題に関するデータをもっと包括的に、関係的に見ていかなければいけないようです。

そのため、関連する資料をできるだけ集めて、分析を進める必要がありそうです。

 

無理なものは無理だけど

言説分析はある言説を他の言説との関連も含めた全体的な空間の中で分析する手法で、内容分析はそのための有用な一手段であることがわかりました。

フーコーが言うように「すべてを読み、すべてを研究する」ことは無理かもしれませんが、そこに近づくための努力が必要なことを改めて実感したところで、この記事のまとめとします。